Nov 13, 2010
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「Windows Azure Platform」の位置づけを正確に理解するには、SaaSやPaaSといったサービスの提供形態(サービス・モデル)だけでなく、システムの運用形態(デプロイメント・モデル)も合わせて理解する必要がある。ここではそれぞれについて簡単に紹介し、Windows Azure Platformの位置づけについて解説する。
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【Windows Azure Platform運用管理ガイドについて】 本ガイドでは、対象読者をインフラの設計、導入および運用管理を担当するIT Pro(IT担当者)に絞り、マイクロソフトが提供するパブリッククラウドのプラットフォームである「Windows Azure Platform」について、その位置づけとWindows Serverとの違い、そしてIT Proに求められる作業項目について解説しています。本ガイドにより、IT ProがWindows Azure Platformを使用したインフラストラクチャーの設計方針を理解するとともに、具体的な管理手法を身に着けることを目的としています。
【1.1】クラウドのデプロイメント・モデル
クラウドの運用形態(デプロイメント・モデル)は、大きく分けて以下の3つに分類される。
・パブリッククラウド・プライベートクラウド・ハイブリッドクラウド
[1.1.1]パブリッククラウド
パブリッククラウドとは、クラウドベンダーが保有するデータセンターに大規模に展開されたサーバーやネットワーク機器群およびそこにホストされた各種サービスであり、オンプレミス(企業内)にはサービスを提供するための資産を持たない。ゆえに、クラウドベンダーの提供するサービスを購入し利用することでシステムの実装を実現する。
パブリッククラウドのサービス提供形態(サービス・モデル)はクラウドベンダーによって異なり、クラウドの議論に頻繁に登場するSaaSやPaaS、およびIaaSなどがこれに該当する。ただし、サービス・モデルは必ずしもパブリッククラウドに包含されるものではなく、後述するプライベートクラウドであっても、社内利用者への提供形態をSaaSやPaaS、IaaSとして分類することもある。
いずれのサービス・モデルであっても「ハードウェアの購入、セットアップおよびメンテナンスにかかわるコストは提供側のベンダーが負う」という共通の概念が存在するため、オンプレミスと比較した場合にハードウェアの購入費用やメンテナンス費用を確実に削減できるというコストメリットがあげられるほか、通常数週間程度を要する社内稟議の承認を待たずに、クラウドベンダーへの利用申請さえすればプラットフォームを利用できるため、スピードが要求されるIT投資への判断を速やかに実行できるといったビジネス上のメリットもあげられる。もちろん、必要のなくなったサービスを廃棄したり、不要になったサーバーを縮小したりするといった操作も容易に行えるように設計されているので、これまで課題として取り上げられることの多かった需要と供給のかい離を解消する手段としても注目されている。
マイクロソフト以外にもパブリッククラウドを提供するベンダーは多く、それぞれに課金方式や機能的な特徴を持っている。マイクロソフトが提供しているパブリッククラウドのプラットフォームは以下の通りだ。
・BPOS(Business Productivity Online Suite)・Office 365(BPOSの後継製品、2011年4月現在 ベータ版提供中)・Microsoft Dynamics CRM Online・Windows Intune・Windows Azure Platform
BPOS、Office 365、Microsoft Dynamics Online、Windows IntuneはいずれもSaaSに属するサービス・モデルであり、すでにリリースされているものは契約すればすぐにその機能を使い始めることができる。Windows Azure PlatformはPaaSとして提供されているアプリケーションプラットフォームの総称であり、大きく分けて「Windows Azure」「SQL Azure」「Windows Azure AppFabric」「Windows Azure Marketplace」の4つのプロダクトに分類される。これらについての詳細は後述する。
[1.1.2]プライベートクラウド
パブリッククラウドとは逆に、オンプレミス(組織内)または組織が契約したデータセンターに展開されたサーバーやネットワークを使用して利用者にサービスを提供する運用形態(デプロイメント・モデル)を、プライベートクラウドと呼ぶ。プライベートクラウドの利用者とは、一般的にその組織に所属する人間となる。
パブリッククラウドが、サービス(プラットフォームや機能)の販売や共有を目的とした専用のインフラストラクチャーを新たに設計して提供しているのに対し、プライベートクラウドはすでにオンプレミスに展開されているインフラストラクチャーの発展系としてとらえられることが多い。そのため、よく誤解されがちな点として、「仮想化」との混同があげられる。
NIST(National Institute of Standard and Technology)によるクラウドコンピューティングの定義にもあるとおり、一般的に以下の5つの機能が備わっているインフラストラクチャーを「クラウド」と呼ぶとされている。
(1)セルフサービスによりオンデマンドでサービスを利用することができる(2)さまざまなプラットフォームがネットワークを通してアクセスすることができる(3)マルチテナントモデルであり、利用者が直接サーバーやストレージの場所を把握することができない。ただし、国やデータセンターの場所といったレベルで特定することが可能であってもよい(4)必要に応じてすばやく(ときには)自動的にスケールアウトしたり、スケールインしたりすることができ、利用者はいつでもそうした機能を購入することができる(5)ストレージやプロセッサの使用料などのサービスごとに適切な計測がなされて、リソースが自動的に最適化される
よって、例えばHyper-Vを使用してサーバーが集約されているだけの状態は単なる仮想化であり、プライベート“クラウド”とは言えない。
マイクロソフトはオンプレミスのシステムをプライベートクラウド化するための機能を実装した製品として、System Center製品群を提供している。なかでも「System Center Virtual Machine Manager(SCVMM)」およびそのアドインソフトウェアである「SCVMM Self-Service Portal(SSP)」はプライベートクラウドを実現するための中核製品である。以下にSystem Center製品群の一覧を示す。バージョンは2011年4月現在リリースされているものだ。
・仮想環境管理:System Center Virtual Machine Manager 2008 R2・構成管理:System Center Configuration Manager 2007 R3・稼働監視:System Center Operations Manager 2007 R2・ITサービス管理:System Center Service Manager 2010・バックアップ:System Center Data Protection Manager 2010・プロセスの自動化:Opalis 6.3
上記のうち、OpalisのみがSystem Centerブランドを冠していないが、これは2011年度中にSystem Center Orchestrator 2012にアップグレードされる予定だ。ちなみに、すべてのSystem Center製品群は2012年までに新バージョンがリリースされる予定であることが2011年3月にラスベガスで開催されたMicrosoft Management Summit 2011で発表された。
この発表には、コードネーム“Concero”と呼ばれる、パブリッククラウドを含めた管理製品の発表も含まれており、マイクロソフトがオンプレミスにおけるパブリッククラウド環境との統合管理を目指していることがわかる。
[1.1.3]ハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドとプライベートクラウドを組み合わせて使用するデプロイメント・モデルをハイブリッドクラウドと呼ぶ。ただし、オンプレミス環境のプライベートクラウド化が進んでいない現状においては、パブリッククラウドとオンプレミスのシステムを連携させることをハイブリッドクラウドと呼ぶことも多い。
すでにオンプレミスにシステムを持っている企業の場合、それらを一気にパブリッククラウドに移行することは容易ではない。原因は政治的理由、技術的理由などいくつも考えられるが、以下にパブリッククラウドへの移行を躊躇する具体的要因をいくつかあげてみる。
・運用要件に合った認証基盤が存在しない・SQL Serverによる大規模データウェアハウスがすでに構築済みである・ネットワークの帯域確保が保障できない・環境変更が発生する可能性が大きい・低コストでアプリケーションを移行するための手法が確立されていない・個人情報や基幹業務に関するデータを外部のサーバー(特に国外)に保管することへの不安感・海外のデータセンターに保存されたデータに対する法律(国内および国外)の適用・組織のシステム調達基準がパブリッククラウドサービスの利用を前提としていない
いずれもオンプレミスで運用を続けているかぎりはあまり噴出しない問題ではあるが、それでもコスト面の最適化やスケールの自由度など、パブリッククラウドの機動性は企業にとって捨てがたく、なんとかその恩恵にあずかりたいと考えるのが人情だ。
そこでオンプレミスとパブリックの“おいしいとこ取り”をしたハイブリッドクラウドの登場となるわけだが、パブリッククラウドやプライベートクラウドと異なり、ハイブリッドクラウドを提供するインフラストラクチャーというものが存在するわけではない。パブリックとプライベートを結びつけるミドルウェア的テクノロジーによって、パブリックとプライベートのハイブリッド環境が実現できる。
ハイブリッドクラウドを支えるテクノロジーはさまざまであるが、マイクロソフトは主に以下の4つのシナリオ(データ同期、アプリケーション間通信、セキュリティ、ネットワーク)をカバーするテクノロジーを提供している(一部ベータ版)。詳細は後述する。
【1.2】クラウドのサービス・モデル
冒頭でも述べたとおり、クラウドはデプロイメント・モデルとサービス・モデルの2つの側面でとらえる必要がある。サービス・モデルとはサービスの提供形態であり、大きく分けてSaaS、PaaS、IaaSの3つに分けて語られることが多い。
[1.2.1]SaaSとは
SaaS(Software as a Service)はソフトウェアの機能をサービスとして提供する形態である。多くの場合、利用者は手元のPCにソフトウェアをインストールする必要がなく、Webブラウザを経由してSaaSが提供する各種機能を使用することができる。マイクロソフトの場合、Office 2010やExchange Server、SharePoint Serverに加えて、Dynamics CRMもSaaSとして提供されており、社内にサーバーを購入してセットアップすることなく、各ソフトウェアの機能を使用することができる。また、バージョンアップなどによる新たなライセンス取得や再セットアップにかかわるコストのほか、ソフトウェアの障害修正パッチの適用コストも削減できるからだ。
SaaSは、契約すればすぐに使い始められるところにメリットがあるが、基本的に提供されている機能をそのまま使用することが前提である。とはいえ、SharePoint OnlineやDynamics CRM Onlineをはじめとして、SaaSでは外部プログラムとの通信が可能なWebサービスが用意されており、アドインプログラムの作り込みによってより複雑なビジネスロジックを独自に実現することが可能となっている場合が多い。
[1.2.2]PaaSとは
PaaS(Platform as a Service)とはアプリケーションのプラットフォームをサービスとして提供する形態である。「プラットフォーム=OS(マイクロソフトであればWindows)」と考えがちであるが、SQL Serverがオンプレミスにおけるデータ層アプリケーション(Data Tire Application:DAC)のプラットフォームであるということを踏まえれば、Windows AzureだけでなくSQL AzureもPaaSであると言える。
PaaSの特徴は、プラットフォームがメンテナンスフリーであるという点である。また、SaaSがソフトウェアの機能をサービスとして提供するため、自由な業務アプリケーションの構築で一定の制限に縛られてしまうのに対し、PaaSはプラットフォーム上に展開するアプリケーションを自由に開発できる。多くの業務アプリケーションがスクラッチで開発されていることを考えれば、現在のIT文化に最も適した環境であると言えるし、IT Proが望む「プラットフォームのメンテナンスコスト削減」と、開発者が望む「これまでの開発手法の継承」が同時に実現できるのがPaaSと呼ばれるサービス・モデルの特徴であると言える。
ただし、PaaSはIT Proにとって、非常にわかりづらいサービス形態であるかもしれない。これまでの常識や運用設計が一部通用しないかもしれないからだ。それは、PaaSに求められる機能が多岐にわたり、かつその内部処理が複雑であることにも起因している。すでに述べたように、PaaSはプラットフォームのメンテナンスコストを削減し、かつアプリケーションの自由度を高めるのに最適なサービス・モデルであると言えるが、最も実現難易度の高いサービス・モデルであるとも言える。これは、現場のIT Proにとっては初めて出会うインフラストラクチャーであり、PaaSを採用することは、これまでのシステム設計および運用設計のやり方を大きく見直す機会を得ることでもある。
以下に、市場がPaaSに求められる機能のうち代表的なものをあげてみる。
・新規およびハードウェア故障時のOS展開の自動化・OSメンテナンス(パッチ適用等)の自動化・以前のOSバージョン(パッチレベル)へのロールバック・アプリケーションに影響を与えないサービスのスケールアウト、スケールイン
上記を見てもわかるとおり、PaaSを実現するにはアプリケーションとプラットフォームの明確な分離が必須要件であることがわかる。両者が分離されていない場合、つまりアプリケーションをプラットフォームに直にインストールしなければならない場合、PaaSとして多くの問題が発生する。その典型的な例がロールバックだ。つまり、OSに新たな修正プログラムを適用してアプリケーションの動作に影響が出てしまった場合、直にインストールしてしまうと環境を元に戻すことが難しくなる。また、Webサービスを2台構成から3台構成にスケールアウトする場合には、事前に既存のインスタンスをバックアップするなどといった面倒な処理が必要になり、異常に時間がかかってしまうといった弊害も発生する。
マイクロソフトはこうしたPaaSの要件を満たすために、オンプレミスにおいて採用実績の多い仮想化テクノロジーであるHyper-Vを採用し、Windows Azure Platform利用者向けの環境を、そのゲストOSとして提供している。もちろん、これはパブリッククラウド向けに最適化されており、Windows Azureに特別に用意された「Fabric Controller」と呼ばれる機構とともに、PaaSを実現している。
[1.2.3]IaaSとは
IaaS(Infrastructure as a Service)は、インフラストラクチャーをサービスとして提供するサービス・モデルである。もっと簡単に表現してしまえば、ハードウェアが提供されるので、その上で動作するプラットフォームとソフトウェアは利用者自身が用意することになる。オンプレミスにおけるインフラの考え方と似ていることや、仮想化された環境を比較的簡単に移行できることから、クラウドと聞けばIaaSを思い浮かべるIT Proは多いはずだ。
一方でIaaSの問題点としてあげられるのはメンテナンスコストだ。プラットフォームの自由度が従来どおりである一方で、それはメンテナンスの責任も負うということでもある。確かにハードウェアのメンテナンスからは解放されるが、障害修正やサービスパックの適用などはすべて利用者に一任されているという点に注意しなければならない。
マイクロソフトは、現時点でIaaSと呼ばれるサービス・モデルをパブリッククラウドには提供していない。後述するが、「VM Role」と呼ばれる機能はPaaSの持つ原理的な不便(サービスの前提条件となるランタイムモジュールのインストール手順など)を解消する回避策として用意されているものであり、決してIaaSの実現を目的としたものではないという点に注意しなければならない。
表1にSaaS、PaaS、IaaSの比較表を示す。
(Windows Azure Platform運用管理ガイド 制作委員会)
【印刷、参照用ドキュメントファイルのダウンロードはこちらから】 ■IT Pro(IT担当者)のための Windows Azure Platform 運用管理ガイド 1.0[URL]http://technet.microsoft.com/ja-jp/cloud/hh224648.aspx
(Windows Azure Platform運用管理ガイド 制作委員会)
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